勝川STAND

勝川STANDは、個人事業主様・フリーランス・小規模店舗経営者様に、無料ツールを使って、撮影から制作までリーズナブルにクリエイティブを提供します。

波頭亮『AIとBIはいかに人間を変えるのか』で働く必要のない世界での生き方を学ぶ

BIについては、ピンと来ない人はまだまだ多いかもしれない。BIはBasic Incomeの略称で、国民全員に生活できるだけの現金を無条件で給付すること。それだけを聞くと「んなこと実現するわけないじゃん、普通」と感じる人が多いと思う。でも、これからAIが凄まじい勢いで成長していけば、僕たちの多くの仕事がAIに奪われ、新たな仕事を生み、BIが実現するということは決して夢物語で終わらない。本書では人類史上初となる、「労働」から解放された社会で、どのようなマインドセットを持って生きていく必要があるのかを説いている。

 

AIとBIはいかに人間を変えるのか (NewsPicks Book)

AIとBIはいかに人間を変えるのか (NewsPicks Book)

 

 

AIもBIもどちらも桁違いのマグニチュードで社会に大きなインパクトを与える。それは社会のあり方を覆してしまったルネサンスに匹敵するほどのインパクト。得体の知れないことの重大さが、世の中のあちこちで話題になってきた理由として、知的労働の価値の暴落と、感情労働の価値の向上が挙げられ、インテリジェンスから感性へと世の中がシフトしているとも言える。人間は食うため、生きるための労働から解放される。しかし、働かなくてもいい世界は苦悩の淵と隣り合わせであり、人間はどう生きれば豊かな人生を送れるのかを改めて考え直す必要がある。

 

人間には心や感情があり、それらに裏付けられて身体を使うからこそできるものがある。人間は無意識的に経緯に基づいた情報の選別判断をしており、AIは何を考慮の対象とするのかを人間のように瞬時に判断することができない。そこで、近年AIが劇的に発展することになったディープラーニングが登場した。ディープラーニングで、コンピュターは目を持ち、捨てることを覚えた。人間の分かるというプロセスは、何かと比べて違いを認識することで、判断に重要なポイントだけを用いるのは、人間のヒューリスティックパターン認識に近い。

 

AIの発展は機械学習ディープラーニングといった情報処理プログラムだけではなく、ハードウェアの性能向上、ビッグデータの活用によってブレイクスルーが実現した。AIにはまだまだ問題があって、アルファ碁で言えば、人間の1200人分の電力がかかっており、人間の知能を代替するためのコストはまだまだ実用するには時間がかかる。能力的にも問題がある。AIはあくまで人工の知能であって、人間の能力は知能だけではない。むしろ知能以外の能力が知能と相まって、AIを遥かに超えた様々なことができるのが人間であると考えるべき。AIは相関関係の判断が得意である一方、因果関係の判断は苦手であり、解がひとつに定まらない、もしくは、そもそも正解がないものなど、不確実性が高い状況の判断には向いていない。AIはデータから学ぶが、人間は失敗から学ぶもの。人間特有の本音と建て前のギャップや声色、表情といった曖昧な、そして包含する意味内容が状況によって都度変わるような対象を読み解くことは、AIにとっては非常に難しい問題である。人間がものを分かるというプロセスにおいて、論理以外の様々なファクターを用いており、また、人によって最適解が異なる。合理性が求められるタスクでは実力を発揮できるものの、論理的・統計的合理性から切り離されたタスクではあまり力を発揮できない。

 

AIが進化し、技術革新で無くなる職業がある一方、生まれてくる職業もある。AIが苦手とするのは、身体性ベースのマルチタスク要素、直観直感の要素、クリエイティブ要素などの分野。マルチタスクとう意味ではコンビニ店員などはAIを実装してもロボットには対応が難しい。クリエイティブにおいてもAIのそれは、創造ではなく、まだまだ模倣というレベルであり、本当の意味でクリエイティブというには程遠い。

 

 

BIに似たもので、生活保護というものがあるが、それにかかるコストは対象者に支払うもの以外にも、運用面で非常に効率が悪いお金の使い方をしているが、一方BIはシンプルで運用コストも小さい。たびたびBIによって、働くインセンティブが削がれることを懸念する声が聞かれるが、実際には心配する必要がないというデータも出ている。企業側にも、終身雇用や福利厚生などの保証の体力を軽減するメリットがあり、働き方改革が更に加速し、社会全体が活性化する期待もできる。民主主義社会において、大きく三つの思想があるが、コミュニタリアンリバタリアンネオリベラリストの三者がBIを評価しているという他に類を見ない非常に合理的な仕組みであると言える。

 

BIによって、単に食べるため、生き延びるためにではなく、生活を豊かにするため、仕事自体を楽しむためなど、個々人の人生の目的や価値観に応じて仕事内容や働き方を選択できるようになり、人にとっての仕事の意味や人生における仕事の位置付けは変化する。個人の存在意義と価値は、社会的コミュニティの中で規定されるが、仕事はその人の社会的座標を与えてくれるであり、社会と有機的に繋がることで、自分自身が何者であるかを認識できる。

 

AIは人間の持つ知的パワーを代替するが、そのパワーに人間が敵わなくなれば、価値を生産するための活動に人間が関わる必要性がなくなる。AIは摩擦的失業の解消が追いつかないほどのパワーを持っており、究極的には全ての生産活動がAIだけで賄われるぐらいのインパクトであり、そのような社会になったとき、人間が生きていくために必需的に求められる財・サービスの生産は圧倒的に効率化され、実質的なコストも小さくなり、その生産物を消費することが人間の経済的役割になる。

 

仕事は、労働(Labor)、仕事(work)、活動(action)に分けられるが、AIとBIによって人間が生きるために働くことから解放されて、生きるための労働以外の活動を行うために生きる社会になることで、生きるために仕方なくやらされる労働(Labor)は無くなり、労働を提供して対価を得るのではなく、自己実現や社会貢献をしようとする活動(action)が増えてくるだろう。AI + BIの世の中で豊かに生きるためには、やりたいことを自ら持たなければならなく、そのためにはやりたいことを見出す能力が必要。これからは何をやっても良い状態で、何をやるのかを自発的に決める必要がある。身体的にも、知的にも、感情的にも、備わっている能力を、フルに発揮できることが快いと感じる感覚のメカニズムを持つ。本来持っている能力を十分に発揮できない生活は、心身の健康を壊す。心身ともにポテンシャルをフルに働かせて経験と修練を積むことで、楽しく豊かだと感じられる人生をおくることができる。

 

これまで人口増によって経済成長してきたが、現在起きている経済が豊かであるのに人口が減少するという事実は、人類が新しいステージへシフトするシグナルと言える。答えを自ら考えるより、すでにある答えを検索するほうが効率的に見える社会風潮があり、現代人の考える力は低下している。この先、人間がAIに依存すれば人間の能力を下げることになり、結果的にシンギュラリティを早めることにも繋がる。何をやるのか自発的に決めることが今後必要不可欠となるというが、実際にはそれができない人間のほうが圧倒的に多い。人に人生を決めてもらっても、これまで以上に生き辛い世の中になっていく。人は生まれた瞬間が一番好奇心に溢れていて、その後の成長過程で親や教育機関によって押さえつけられ、大人になっていく。子どもたちには、自分が何が好きで、何をやりたいのか、自分の意志を持つということの大切さを伝え、親としてやれる限りのことをやっていきたいと改めて感じた。

 

AIとBIはいかに人間を変えるのか (NewsPicks Book)

AIとBIはいかに人間を変えるのか (NewsPicks Book)