勝川STAND

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本間充さんに学ぶ、脱・規模優位時代に必要な「シングル&シンプル マーケティング」

今年の4月に、宣伝会議主催の「アドタイデイズ」で本間充さんが登壇されているセミナーに出席しました。そのときのパフォーマンスが圧倒的で、マーケティングという文脈を学ぶには、このひとをフォローしていくべきであると強く印象付けられました。

 

そんな中、先日こちらの本が発売となりました。

 

「シングル&シンプルマーケティング」というのは、本間充さんが提唱されている現代に必要なマーケティング手法のこと。サブタイトルには「個客に深く長く寄り添い、利益を伸ばす」とあります。高度成長期が終わり、国内市場がスケールしていかないことが決定している現代においては、圧倒的にLTVが大事が、それをまず頭に入れてマーケティング活動をしていく必要があって、その重要性を説いている本になります。

 

なんでも多い方がいいとするのは、マーケティングではなく、思考停止とも言えるような判断基準。一昔前で言えば、ホームページの訪問者数が増えるのはただインターネットの利用者が増えていただけで、当然のこと。でも今後は人口増による利用者の増加はなく、お客様の数は根本的に増えないと認識しておく必要がある。そうすれば、自然と戦略がこれまでとは異なってくるはず。

 

日本市場は人口減だけでなく、世帯年収というマーケットにとって大切な数値も下降している。世帯年収の中央値は下降し、もはや国民総中流ではなくなり、昨今のマーケターは自分とは異なる属性の生活者をマーケティングのターゲットにしなくてはならないことが多い。多様性が広がり、日本のマーケティングの世界には、見本的な、代表的な日本人像がなくなっている。また、今後は、国内市場においてもグローバルマーケットが作られていく。市場の中心はあくまで日本人だが、インバウンドを始め、国内在住の外国人も年々増加しており、近い将来、移民ということも現実となる可能性もある。

 

今までは国民総中流=ほぼみんな同じ暮らし、年齢毎のライフステージが同じだった。日本は高度成長期を終え、モノが足りない時代から、自分に相応しいモノを探す時代になった。そして、一人ひとりに向き合って欲しいというお客様の意識が過去より高くなってきている。生活者の価値観が画一的ではなくなり、マスマーケティングが機能しにくい時代に突入した。一番売れているものよりも、一番相応しいもの。マスマーケティングでは、多くのお客様が集まるグループに目を向けるばかりに、今支持してくれているお客様を時に見捨ててきた。そして、それがブランドの統一性を壊し、ブランド価値の弱体化を招いてきた。規模が優先されて、規模が市場で勝つためのファクターとなる時代が終焉と迎えた。

 

デジタルメディアに投資を集中させるのは行き過ぎで、お客様が利用しているメディアを状況に合わせて活用し、すべてのメディア、タッチポイントを含む総合的なデジタルを活用したマーケティングが必要。今求められているのはデジタルマーケティングではなく、マーケティングのデジタル化。印刷物でも、コミュニケーションしたい相手に個人ごとに丁寧なコミュニケーションできる時代になった。

 

これからは誰をターゲットにするかが問題。勘や経験ではなく、マーケティングを科学的に行う必要がある。マーケティングは、アートとサイエンスが融合したビジネス。これまでのマーケティングは4Pのうちのプロモーションに集中してきた。ターゲットを理解して、そのターゲットにとって価値のある商品は何か考える。マスマーケティングでは生活者毎に価値観に大きな違いがない前提で進んでいたが、人口減少社会においては、市場占有率を高めた、自分たちが優位にマーケティングを行うモデルは崩れた。一定規模の顧客数、契約者数に対して長い時間軸を取ることで、これまでとは違う方向で規模を拡大するLTVというマーケティング市場占有率の持つ意味が低下し継続時間が重要な時代になり、これからは時間軸方向に拡大するマーケティングが求められる。これからはモノから提供されるサービス的な価値も個人毎に大きく変わる可能性があり、パーソナル化されるものが増え、求められる。

 

マーケターはお客様から見て、その領域のコンシェルジュになる必要がある。ブランドストーリーに絶対はなく、自分の考えに近いか、自分が応援したくなることが重要。いかに自分向けか、いかに自分に相応しいか、いかに自分にとって良いサービスを提供してくれるのか。マーケティングはゲームではなく、お客様に寄り添うものであると思考を変える。

 

成熟した市場でも、購入というのは生活者にとって大きなイベントで、エモーショナルな体験である。モノの販売、サービスの契約だけでなく、モノを含むトータルのサービスを提供するマーケティング。多様な生活者がいて、その全ての生活者を理解することは難しい。わからないことは素直に聞くというアプローチは能力不足ではなく、必要なアプローチ。百人ビールラボやIdea park のようなオープンな場所を作ることは、既存のお客様を大切にしていることになる。

 

「シングル&シンプル マーケティング」は、マーケティングのターゲットを明確にして、そのターゲットに長い間寄り添うマーケティング。DMPやMAによって、これまでグループとして捉えていたお客様を個人つまりシングルとして捉え、個人ベースでマーケティングを行うことが可能になった。今までのセグメンテーション、ターゲティング型のマーケティングに、LTVの考え方を組み合わせ、考え方を拡張したマーケティング

 

USPはすべての人にとっておなじものではない。情報の流れは双方向になり、非対称性も薄れてきた。お客様が、次のお客様へのエバンジェリストになることを理解し、顧客視点でお客様と一緒に商品、サービス開発をすることで、信頼関係と、相互理解から、よりお客様に相応しい商品や、サービスを提供することが可能となり、サービスを継続する期間が長くすることができる。

 

今後、マーケターは心理学や人間行動学のような学問も必要になる。お客様はポイント還元よりも、最適なアドバイスや、最適な商品の提供を求めている。マーケターがチャネルを決めるのではなく、お客様の望んでいるチャネルを、お客様の望んでいる理由で展開することが重要。いつ、どのタイミングで、どこで伝えるのか。お客様とともに成長し、お客様がお客様を呼ぶ状態にする。マーケティングは時代によって変わるが、人に対する業というのは変わりないため、相手が求めていることを行うことは、いつの時代も普遍。お客様の行いたいこと、解決したいことを聞き出す能力、そして対話が求められる。マーケターとお客様がより人と人の関係になるため、今後はコールセンターなどの組織が重要な存在になる。

 

今後のマーケティングは「4P」ではなく「1D2P1V」がキーワード。

Dialogue(対話)

Person(ひと)

Product(商品)

Value(価値)

 

 

これまでLTVという言葉は自分なりに理解してきたつもりでしたが、本書を通じて、その必要性をロジカルに改めて深く理解することができました。とくに、新規獲得を目指すがあまり、既存ユーザーをないがしろにするキャンペーンを目にすることも多いし、実際に自分で企画することもあった。新規を獲得することをやめることはできないけれど、今いてくれている個客にもっと目を向け、個客に深く寄り添うことで利益を伸ばすという思考をより意識していこう。