勝川STAND

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池田純さんに学ぶ『空気のつくり方』

野球ファンのみならず、横浜ベイスターズの試合の観客動員数が劇的に増加したり、球団が慢性的な赤字経営から黒字経営へ転換したなどのニュースは多くのひとたちが聞いたことがあるかもしれない。このストーリーの主役は住友商事博報堂を経て、DeNAに転身し、2011年に横浜DeNAベイスターズ初代社長に就任された池田純さん。

 

今回は池田式マーケティング理論を学ぶためにこちらの本を読みました。

空気のつくり方

空気のつくり方

 

 

万年最下位争いのチームが、なぜ人気球団になりえたのか、なぜ年間30億円もの赤字を生み出す球団経営が劇的に変化を遂げたのか、そのベースになった理論について詳細が語られておりました。

 

マーケターはデータに執着してしまいがちだが、データはあくまで確認作業であり、そこから何も生まれてはこないし、人間が数字に操られたらいけない。マーケティングにはセンスが必要だけれども、センスは後天的に手に入れることもあるから、学びを止めるという選択肢はない。
 
顧客のハートを魅了する情緒的な何かを創造して、興奮し、驚愕し、感動するエンターテイメントやストーリーを提供するのが、究極のマーケティングである。それを実現するには、コミュニケーション、経営の革新性・透明性、ブランディングの3つをうまく機能させる必要がある。また、特に新規ビジネスは、腰を据えたロードマップと目標を事前に決めておくことが重要である。マーケティングは絶えず進化を繰り返すことが大事で、そして、何よりも、自分にしかできないことに力を注ぐことを忘れてはならない。
 
来場の動機になるモノゴトや、コミュニケーションは何なのか、顧客の想像を膨らませることで、関与度を高める共感可能なものを考える。それが多ければ多いほど、顧客との距離感が縮まり、結果として、それがストーリーとなる。マーケティングを駆使しても、ブランドをつくることはできないが、変えるべきものと、変えていけないものをしっかりと整理すれば、ストーリーをつくることはできる。モノゴトは戦略的に進めるべきで、戦略的に、取り組むべきターゲットを絞り込む。
 
自分の領域の外にあるもの、楽しいものや美しいものやカッコいいものに触れる努力をし続けてこそ、新しい何かを創造できるようになっていくもの。自分が人のためにできること、与えることができるものは何かを考え、誠意ある態度で接し、世の中のコンテクスト、つまり、文脈を読む。空気は、ただそこにあるものではない。必ず何か意味がある。
 
人は仕事や既得権益を抱え込もうとする生き物で、好かれるマネジメントは組織の力を削ぎ落とす。人間というのは基本的には怠ける生き物であることを認識する。三年は何をやっても批判の声は聞こえるもの。でも、結果を出し続ければ、その声はマイノリティになる。人間はネガティヴな意見に敏感に反応するが、その意見に惑わされることなくブレないハートを持つことが必要。ブレは信用を失わせることになるから。
 
好かれるマネジメントは組織をダメにする。誰の目にも明らかな結果を出した人材を評価し、それを象徴的な先例として、意図的に組織全体の空気をつくっていくのが、トップの重要な仕事。
 
 
言葉にはニュアンスが付いてまわる。戦略ターゲットをキャッチーかつ明確に策定することで、マーケティングの対象と広告・コミュニケーションの対象が明確になり、一貫性が生まれる。広告だけでメッセージが伝わり切らないし、広告は消費者から見れば、ただ勝手に言っているだけの存在であることを認識する。広告はアートではなく、コミュニケーションのひとつでしかないが、伝えたいことを伝えるだけでは、それはただの自己満足でしかなく、世の中から見た大義がなく、個人的な言葉には誰も見向きもしない。訴求すべき本質的なポイントを自覚してコミュニケートする。その時、商品とコミュニケーションの乖離が生まれるような、嘘のコミュニケーションをしてはいけない。
 
 
広告の大原則は、どこに、どんなメッセージを投下するか。広告は人を楽しませるものでなければならい。伝えたいことはいっぱいあるけど、削ぎ落としまくることが大切。広告は、自分たちでお金を出して場所を買い、自分たちでデザインし、メッセージをつくり、世の中にコミュニケートするもの。
 
 センスは後天的に身につけられることや、常にオリジナルは生み出せないに気づくことが必要で、まずは先人たちが育ててきた太い幹に寄り添うべき。大きな幹に寄り添いながら、これだと思ったときに枝分かれする。最初から枝分かれするのは、ただの勘違い。自分自身の能力を知り、自分の考えに凝り固まることなく、自分の領域の外側を見にいく努力する。そして、そこになりたい自分があるかどうか、それが何より重要なこと。自分たちがいる業界の外に目を向けることで新たな創造が生まれ、それが人を惹きつける要因となる。 
 
 

劇的な再生を成した企業で言えば、USJも思い当たるが、横浜ベイスターズに関しても、衝撃的な結果が生み出されている。この2社に共通するのは、スペシャルなマーケターがいたということ。USJであれば森岡毅さんであり、横浜ベイスターズであれば池田純さん。そして、お二人とも、自分の掲げた目標を達成すると、自分の役割は終えたとし、退任されて、違う道を進んでいる。

 

自分のなかの精神的なものによるバイアスかもしれないが、最近は、マーケターがマーケットを動かしていることを目の当たりにする機会が多くなった気がする。子どもたちにも、見えてるものの裏側で、誰が、どのように世の中を動かしているのか伝えていきたい。ほとんどの事が、偶然ではなく、誰かの思いがあって結果があるんだと。