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『隷属なき道』でAIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働について学ぶ

 ベーシックインカムについては、今回の衆院選のなかでも希望の党マニフェストとして掲げていたこともあり、世間的には徐々に理解をされてきた気配もあるが、まだまだ何のことなのか理解していない人のほうが圧倒的に多いとは思う。小池擁護派の落合陽一さんも、この件については、時期尚早であると言い切っていた。小池代表本人もそう感じている気もするが、今回の衆院選というよりも、先に政策として、とりあえず言っておくことの先行者有利のようなことを描いているのだろうか。実際、BIの必要性は、いろいろな人が必要性を説いている。なかでも、デジタル系の人種からは、それを強く感じる。

 

今回は、ピケティにつぐ欧州の新しい知性と言われる、若干29歳のオランダ人経済学者であるルトガー・ブレグマン氏のこちらの書籍を読んだ。

 

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働

 

 

きっかけは藤野貴教さんだ。何度も見直しているこちらの動画内で本書を読んでいるような話があったため、今後の社会を生き抜くヒントがあるのではという興味で手に取った。

globis.jp

 

自分自身、社会を良くするためにベーシックインカムを理解しようというマインドではなく、あくまで藤野貴教さんが言われるこれからの時代の幸せな働き方は何かということを学び、少しでも自分の子たちにそれを伝えれればというマインドで読み進めた。

 

個人的には、ベーシックインカムは、現在のAIやロボティクスの急速な発展があって、最近出てきた話とばかり思っていたが、実際には数十年も前から議論され、テスト的に実施してきた国があるなど、経済学者のなかでは言わば定説のような扱いであったことを知った。

 

貧困が生む問題のひとつとして、学力の低下がある。これは非常に大きな問題で、貧困によってIQが13ポイント下がり、それがその後の生活レベルに影響を与え、格差に繋がってしまう。それを解消するためにもベーシックインカムが必要だという。お金を与えることで同時に怠惰も与えることになるのかもしれないという懸念は、実証実験で、心配する必要などなく、むしろ働く意思が向上するという結果が出ている。

 

だが、ほとんどの人、特にここ日本において、貧困という問題はなかなか自分事としてとらえるのは難しい。実際には、細かな問題は抱えながらも、不自由を感じることは少なく、現代社会の技術の発達でますます便利になっていく。そうなると、ただひとつ足りないのは、朝ベッドから起き出す理由というレベルにまでなる。

 

これまで私たちは、本来いらないものを広告で買わせられてきた。経済成長することが私たちとって幸せなことだと洗脳され続け、GDPの成長率という軸を持って、国民の成長であるというイメージを与え続けてきた。経済成長が暮らし向きを良くすることはほとんどない。そもそも、GDPは現在のようなマズローで言う承認欲求というレベルより大きく下に位置する、生きるために必要なことを欲する生理的欲求が中心であった時代である1930年に生まれた指標である。今とは価値基準が異なる時代に生まれた指標に踊らされてはいけない。
 
最近の日本は働き方改革という言葉が広く浸透しており、多くの人たちがその影響を受けている。現段階においては、働き方改革ということよりも、休み方改革というレベルと感じるが、やはりこれにも大きな意味がある。労働時間が減れば、生きる術を向上させる余地が生まれ、あらゆる精神文化を楽しむ機会や、道徳及び社会を進歩させる機会が増える。かつて、ニクソンベーシックインカムや週四日労働など提言していた。これからは、人口2%で社会に必要なすべてを生み出せるようになり、働くことはじきにエリートの特権となる。すると、退屈が蔓延し、人間は機械の世話をする種族となる。これまで、余暇は楽園と同義と見られてきたが、労働の終わりが迫っている将来、最も厄介な問題になる可能性がある。
 
労働時間の短縮で、生産効率は上がるというのが実証実験で明らかにされてきている。ケインズは2030年には労働時間は週15時間となり、最大の課題は増えすぎた余暇だと予想していた。現代社会は、くだらない仕事が増えた。管理職もそのひとつであり、管理職が多い国ほど、生産性と革新性が低い。実際に多くの人が、自分の仕事は意味も必要もないと感じている。富を創造する仕事ではなく、富を移動する仕事に投資が進んだ。
 
ロボティクスの進化で残された道は、構造的失業と不平等の拡大である。ロボットという言葉は、骨折って働くというチェコ語が起源。構造的失業ということをネガティブに考える前に、生きていくためには働かなければならないというドグマを捨てることも、これからの社会を生きるために必要なことになる。働くという言葉の概念を変える。働くはつらいこと。働くは苦しいこと。好きなことでお金はもらえない。そんなことはない。難しいのは、新しい考えに馴染むことではなく、古い考えから抜け出すこと。アイデアの他に世界を支配するものはほとんどない 。
 
儲けは多いがくだらない仕事のおかげで、儲けは少ないが価値のある仕事をすることができる。お金で幸せの深度を測る時代は終わった。お金がなければ、やれないことも事実としてあるが、そのことの多くが知らなければ必要ないものがほとんだ。知ることで目標ができるし、成長できることも多くある。そのバランスや、本質的なものを見抜く力が必要だ。労働時間を減らして、長く退屈な週末を過ごせと言っているのではなくて、自分にとって本当に重要なことにもっと多くの時間を費やそう。
 
人は死ぬとき、何を思うのか。『死ぬ瞬間の五つの後悔』にこう書いてあるそうだ。
 
他人が私に期待する人生ではなく、自分のための人生を生きれば良かった。
あんなに働かなければよかった。

 

後者に関しては、BIによって、この先解消されると思う。前者は、社会保障で変えられることではない。こういうことを子どもたちには伝えていきたい。