勝川STAND

勝川STANDは、個人事業主様・フリーランス・小規模店舗経営者様に、無料ツールを使って、撮影から制作までリーズナブルにクリエイティブを提供します。

山口周さんに学ぶ、経営における「アート」と「サイエンス」(世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?)

最近になってWEEKLY OCHIAIで山口周さんがゲストの回を見ました。そこで言われていた「正解のコモディティ化」という言葉がすごくハマって、周回遅れでしたがこのたび本書を読みました。

 

昨年のLive Picksでも佐々木紀彦さんがおもしろい本だと紹介されていて、 以前から売れているのはよく知ってましたが、特に自分自身エリートになりたいわけではないし、デザインには興味あるけど、アートと言われるまでのリテラシーもないので、本書のタイトルからは自分事ができずにいましたが、結果的に勘違いでした。

 

どんなことが書いてあるかというと、それは本書の最初にある「忙しい読者のために」を読めばそれで完結します。そこに伝えたい結論が書いてありますので、それを読めば理解できるかと思いますが、自分自身の復習のために、以下に要約させていただきます。

 

近年、MBAの出願数が減少傾向にあるなか、10年ほど前からアートスクールに多くのグローバル企業の幹部が送り込まれている。それはサイエンス重視の意思決定では、今日の不安定な世界のビジネスの舵取りはできなくなり、これまでの論理的・理性的スキルに加え、直感的・感性的スキルの獲得が期待されているから。

 

論理的なものが好まれる結果、差別化される要素が減り、正解のコモディティ化が起き、論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈されつつある。他人と同じ正解を出すことで、差別化が消失している。

 

世界中の消費が、自己実現的消費へと向かっている。承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要となり、全ての消費ビジネスがファッション化しつつある。 これまでは、日本企業の経営に関わる人たちの美意識がほとんど問われてこなった結果、計測可能な指標だけをひたすら伸ばしていくゲームのような状態に陥っている。私たちは世界という作品の制作に、集合的に関わるアーティストであるからこそ、この世界をどうしたいかというビジョンを持って生活を送る必要がある。個々人が社会彫刻に、集合的に参画するアーティストであると自覚する。ウォークマンの商品化、iMacの五色展開、いずれもマーケット調査での論理的理性的なアプローチでなく、経営者の直感的感性的な意思決定によるもの。

 

論理的にシロクロつかない問題は、最終的に個人の美意識に頼るしかない。正解を出せる人が少ない時代は、正解に高い値段が付いた。他人と戦略が同じだったため、日本企業はスピードとコストで差別化してきたが、その強みは失われつつあり、歴史上初めて、本当の意味での差別化を求められている。

 

経営はアート、サイエンス、クラフトが混ざり合ったものだが、アートの良し悪しについては根拠を説明するのが非常に難しい。サイエンスに特化する判断であれば、経営コンセプトとビジネスケースを大量に記憶した人工知能にやらせればいいが、ワクワクするようなビジョンや、人の創造性を大きく開花させるようなイノベーションは生まれない。

 

プランはアート型人材、ドゥーはクラフト型人材、チェックをサイエンス型人材が行うことでバランスの良い経営が実行できる。ディズニーは、革新的なビジョンを生み出すウォルトと、元銀行員で財務面リーガル面で支えた兄のロイ。強烈なビジョンを掲げてアートで組織を牽引するトップを、サイエンスやクラフトで強みを持つ側近が支えるという図式。デザインと経営は、エッセンスをすくい取って後は切り捨てるという共通点があって、強い会社は選択が強いのではなく、捨てることに長けているからと言える。直感を信じるには、優れた美意識が必要になる。

 

現代社会における消費とは、最終的に自己実現的消費に行き着かざるを得なく、ファッション的側面で競争せざるを得ない。ファクトベースのコンサルティングアプローチをするマッキンゼーでさえ、クリエイティブ会社を買収した。アップルの強みはイノベーションではなく、ブランドに付随するストーリーと世界観にある。デザインとテクノロジーはコピーできるが、ストーリーと世界観はコピーが難しい。優れたイノベーションであればあるほどコピーの対象となるが、言語化できるものは全てコピーされてしまう。デザインとテクノロジーだけでは一時的に勝つことができても、勝ち続けることは難しい。

 

 

会社という狭い常識が、社会という広い世間の常識と異なることに気づけない。自分が所属している狭い世間の掟を見抜けるだけの異文化体験を持つことで突破できる。美意識を持つということは、目の前にまかり通っているルールや評価基準を、相対比較できる知性を持つこととも言える。変化の厳しい時代においても成果を出し続けるリーダーは、セルフウェアネス=自己認識能力が長けており、マインドフルネスでその能力を高めることができることが脳科学的にも実証されている。悪とはシステムを無批判に受け入れることで、システムの要求に適合しながら、一方でシステムを批判的に見ることが重要。批判的に疑いの目を向けるという意味で、哲学とロックの思想は近い。

 

 

私は、自分の考えやアイデアに自信を持つことが得意ではない。アカウンタビリティを持つサイエンスによる結論を相手に提示することが多い。そのほうが相手も自分も判断がしやすい。けれど、今後ますます自己承認社会が加速していったとき、それだけで説明していくのには限界がある。美意識を鍛えると言うと難しいことに感じるので、まずは何事においても、美しいか否かということの判断を持つことから始めようと思う。